二村ヒトシ×名越康文:「逃げ恥」ができない男たちよ、ストレスは岡本太郎のように昇華せよ

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■世界の毒が、これ以上逃げられない場所で生まれ変わる

二村:さて、この連載のテーマなんですが、女性の社会進出に伴って世の中では、女性の権利がいろいろと提起されるようになりました。その一方で、男性の息苦しさも以前より多く観測されるようになってきたのではないかという問題を、ゲストの方々と考えていきたいんです。

名越:実はね、とあるクラブのママさんと親友で。昨日、お昼にお店でコーヒーを飲みながら話していたんですよ。そうしたら、滅多に愚痴を言わない太陽のようなママが珍しく毒を吐いたんです。というのも、ママの店に来た一流企業に勤めるお客さんがベロベロに酔っ払って、ほかのクラブの悪口を言い始めたらしいんです。

そこまではよくある話なんですけど、今度はママの店の文句まで言い始めて、さらには上司の悪口を延々と始めたらしいんですよ。しかも、そのお客さんまだ30代。

二村:一流企業に勤めている若い男性でも、酔って飲み屋のママに、あまり建設的ではない愚痴を吐き出すことでしかストレス解消ができないケースがある。

名越:しかもその吐き出し方が異様に長くて。それを僕がまたママから吐き出されているわけ(笑)。

二村:そもそも社会には、なんらかの毒が必ずあって、サラリーマンの彼はその毒を受けちゃって愚痴を吐くしかなかったんでしょうが、その毒があんまりひどいと優しいママでも飲み込むことができず、さらに名越さんに向けて吐き出すしかなかった。

でも、今の名越さんのお話に毒はなくて、考えるべきエピソードに変化している。毒っていうのは話すことで、人から人に伝わっていくことで薄まっていくものなんですかね? それは伝える側の人柄にもよるか……。

名越:いま僕は笑顔で話しましたけど、もしかしたらママの話を聞いた後に犬かなんかを蹴っているかもしれない(笑)。もちろんしていないですけど、その可能性はあるわけで。そうなると薄まったかどうかは分からないですよね。

二村:毒を増幅してしまうことも、ありえますからね。

名越:いきなり大きな話になりますけど、日本ってユーラシア大陸の東の果てですよね? たとえば、ずっとずっと昔に戦争があって、負けては逃げてきて、最後は日本まで逃げてきたと。だけど、これ以上は海を渡る力がない。アメリカまでは行けないわけ。これが太平洋の大きな役割で、極東にある日本は何かしら昇華しなくちゃいけない。

つまり、日本は本来「逃げ恥」のような文化がない。だからこそ「逃げ恥」つまり、しんどかったら逃げていいんだよ、ということを言ってもらわないと潰れてしまうわけですよね。もう東の果てで逃げようがないわけですから。でもストレスはかかって来る。そこに禊や祓い、儀礼や祈祷を経て昇華されるという文化が発達したのではないか、という考え方もあるかなと。

二村:世界の毒みたいなものが、最果ての場所で生まれ変わる。それはどこか仏教的ですね。

名越:AVファンとして言わせてもらえれば、AVも断トツに日本の文化。ほかの国にあのセンスはないから。

二村:AVやアニメや漫画やゲームといったサブカルチャーもそうですが、現代日本の食文化や生活習慣も、すべてアジアから極東まで流れ着いたストレスや毒が錬金術みたいに精錬されたもので、それがまたアジアへと還って消費されていくのかもしれない。

名越:そうかもしれない! 中国のことは結構苦手なのに、「三国志」がこれだけ好きな民族もいないですからね。今や悪役だった曹操が一番のヒーローになっているわけで。噛みしだいて噛みしだいて、最後に残った毒さえも英雄にしている。ものすごく特殊な国ですよ。

※1:ふたなり……男性と女性の性器を持ち合わせた両性具有を指し示す言葉

※2:去勢不安……父親に男根を切り取られるのではないかという幻想的な不安

≫≫≫「男は黙ってサッポロビール」の呪い





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