インドネシアのファッションに注目 – asahi.com

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 今週から2017年秋冬東京コレクション(アマゾンファッションウィーク東京)が開かれている。日頃の雑事に追われて、ゆっくり見る時間がなかなか取れないのだが(これは弁解?)、たまたまインドネシアから参加したブランドのショーを見て、最近の東南アジアのファッション事情に目を開かれる思いがした。そして、こんなことも知らなかったのか、と反省を迫られたのだ。

 東南アジアといえば、絹や麻などの独特な素材や地域ごとの洗練された伝統的な染め織り文様、また高温・多湿な気候に適した民族服のスタイルが思い浮かぶ。しかしそれらは、あくまで伝統服のことで、同時代のファッションとしてではない。この地域の人々が今はどんな服を着ているか、とは考えることもなかったし、はなから無関心だった。なぜかといえば、パリやミラノ、そして東京のファッションウィークで、東南アジアの国からのジャーナリストやバイヤーの姿をつい最近まではほとんど見かけることがなかったからだ。

 参加したブランドは二つで、その一つは「bateeq」(バティーク)。ブランド名は、日本でもよく知られているインドネシア伝統のバティック(ジャワ更紗)に由来したのだろう。この素材を現代的なストライプ柄の布と切り替える大胆な構成で、服そのものはとてもシャープで活動的に見える。ろうけつ染めの柄も色使いは伝統の更紗と同じだが、図柄は大振りで躍動的で、伝統服では無かったプリーツ加工などが施されている。

 そうしたデザイン的工夫によって、bateeqの服はジャカルタなどの都市で日常的に着られる服になっている。とはいえ、東京や欧米のリアルクローズとは違ってとても個性的に見えるのは、素材がバティックというだけではなくて、シルエットが伝統服のケバヤなどの形を思わせるからだろう。

 このブランドは、インドネシアでは商業的にも成功しているアパレルブランドだという。デザインを担当しているミシェル・チョクロサプトロさんはまだ若いが、CEOも兼ねている。「会社にはバティックのアーカイブがたくさんあって、いつもその中にある哲学を学んで、それを生かすようにしている」と語っていた。

 もう一つは「Rani Hatta」(ラニ・ハッタ)で、こちらはムスリム向けブランドだという。インドネシアの人口は約2億5千万人で、その多くがイスラム教徒。だから考えてみれば、ムスリムファッションというのがあって当然なのだ。イスラム教徒の女性がみんな、全身を包む真っ黒な服を着ているわけではないからだ。

 ショーに登場したのは、スポーティーでシンプルな服だった。色は黒、グレー、白で、あとは差し色として使われた細いテープの赤だけで、東京の普通のスポーティールックとほとんど区別がつかない。だが違うのは、ヒジャブ(髪と首を覆うスカーフ)があることだ。これなら信仰心の強い女性でも安心して着られるだろう。デザイナーのラニ・ハッタさんは「特別な人のために作っているわけではない。着る人がイスラム教徒というだけ」と語った。

 ヒジャブにしても、ヨーロッパのカトリック修道女や日本の尼僧でも同じように髪と首を隠していた。スポーツルックということで言えば、冬の競技では髪と首を覆うスタイルが普通だ。何もイスラムの専売特許ではないのだ。

 インドネシアでは、特に1998年のスハルト政権崩壊以後の急速な経済発展により、ファッションへの関心が高まったという。経済成長の三つの重点分野が、イスラム金融、ハラール食品(イスラム教の禁忌食材を使わない食品)、そしてムスリムファッションとされているとのこと。米フォーチュン誌の記事によると、2013年にイスラム教徒が衣服や靴などに費やした総額は、日本とイタリアのファッション関連支出の合計額より多いという。

 それだけのマーケットを持つムスリムファッションが、その枠を超えてもっと注目されても不思議ではない。すでにH&M、ZARAでもムスリム風の服を発売しているようで、これからはパリやミラノ、東京のトップファッションブランドが注目する可能性もあると思う。アメリカのトランプ大統領はイチャモンをつけるかもしれないけれど……。





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