『日経会社情報』が事実上の廃刊。ネット時代に敗れる – NET-IB NEWS

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 『日経会社情報』と『会社四季報』。ビジネスマンに必須アイテムの企業情報誌である。現在は、インターネットですぐに決算情報が開示されるが、それまでは上場会社の決算情報を知ることができる唯一の情報誌であった。その『日経会社情報』が休刊。事実上の廃刊である。ネットで簡単に企業情報が手に入るようになり、ペーパーの企業情報誌は淘汰された。

『四季報』の牙城に『会社情報』が殴り込み

 (株)日本経済新聞社は、こう発表した。

 〈季刊誌『日経会社情報』を、6月をめどに新しい有料デジタルサービスに刷新し、パソコンとモバイルで提供します。上場企業の決算発表や株価情報、企業のニュースをタイムリーに提供するとともに、ニュース連動の注目株検索や銘柄の自動比較機能を備え、投資や会社分析にいっそう役立つ商品に生まれ変わります。
 これに合わせ『日経会社情報』は3月17日発売の「2017春号」をもって休刊します。1979年3月の創刊以来、38年間にわたりご愛読いただきありがとうございます〉

 日本経済新聞社が『日経会社情報』を発行し始めたとき、(株)東洋経済新報社の『会社四季報』はなくなるのではないかと噂されたが、今でも類似誌で7割強という圧倒的トップの座を守り続けている。

 『会社四季報』の創刊は1936年11月。投資家のための企業情報誌で、四半期ごとに刊行されるため『四季報』と呼ばれている。全上場企業を調査し、業績予想などの企業情報を掲載している。

 最大の顧客は証券会社である。証券会社の営業マンが顧客に証券会社の名前を印刷した『四季報』を配って歩くのが当たり前だった。1年に4回、証券マンは顧客回りして、『四季報』を配り、見返りに売買注文をもらうのが慣例であった。

証券アナリストたちに支持された『会社四季報』

 『日経会社情報』が登場したとき、日経のブランド力をもってすれば、証券会社から『四季報』を奪うことができると考えられた。当時、日経による大手証券会社に対するモーレツな押し込み販売が証券界の話題をさらったほど。だが、証券会社に築いた『四季報』の牙城を崩すことはできなかった。

 勝負を分けたのは、情報の精度だった。両社とも上場会社にアンケート調査を送って、基礎データを収集する。しかし、そこからが違う。

 『四季報』は、各会社を担当する記者がついている。小さな会社でも取材する。そのうえで、『四季報』の今期・来期予想が出される。『四季報』の業績予想の数値が、会社発表の数値と異なるのは珍しくない。これに対して、『会社情報』は会社発表の業績予想の数値を記載する。

 『会社情報』の業績予想は会社予想だが、『四季報』の業績予想は同誌のオリジナルである。これがプロの投資家たちに支持された。証券アナリストの見立てが株式市場に与える影響は大きい。彼らは例外なく『四季報』を使用していた。アナリストの目線にたった業績予想の数値を参考にしていたからだ。証券アナリストは『四季報』に軍配をあげた。

 企業情報誌の購読者は、証券アナリストのようなプロの投資家ばかりではない。ビジネスマンの必携書であった。しかし、今はネットの時代だ。決算発表と同時に、各社のホームページに決算短信が開示される。『四季報』や『会社情報』に頼らなくても、決算数値は入手できる。

 インターネットやスマホが普及したことで、メディア界の在り方が変わった。紙媒体の広告からWeb広告へと急速に移っていったように、紙媒体の終わりが唱えられた。『日経会社情報』の休刊(実質的な廃刊)は、ネットに紙媒体が淘汰される象徴的な出来事であった。

 『会社情報』の撤退で『四季報』が上場企業情報を独占するが、懸念材料がある。

決算短信から「業績予想」から消える!!

 上場企業は年4回、四半期ごとの決算を公表する。その決算内容を平易にしたものが四半期決算短信だ。東京証券取引所は2017年3月期末以降の決算短信から、決算短信を簡素化する。証券アナリストや個人投資家などがもっとも注目している「業績予想」という重要項目が抜け落ちることもありうる。

 企業開示の見直しは、15年6月の「日本再興戦略改定」に盛り込まれ、金融庁の金融審議会が16年4月に決算短信の開示化を柱とする報告書をまとめた。東証の方針はこれを踏まえた措置だ。

 16年10月の安倍晋三内閣の諮問機関である「未来投資会議」は、決算短信で四半期ごとの決算予想をなくすことが議論された。

 17年1月27日の「第4回未来投資会会議」では、安倍首相から「過度に短期的、投機的取引に陥ることなく、中長期的な企業価値の向上を後押しする観点から、四半期報告を含め、企業情報開示の在り方を見直し、投資家が真に求める情報が効率的・効果的に開示されるように」する方針が示された。

 四半期決算短信に開示される業績予想は、短期的・投機的な取引を煽るだけだから止めろというわけだ。短期売買志向の投資家を閉め出すことを狙ったものだ。だが、多くの投資家は短信の業績予想を重視しており、情報開示の後退を懸念している。

 安倍首相の意向を受け、東証の決算短信の簡素化は、従来の「義務」から「要請」に上場原則を変えた。業績予想の公表は、縛りがなく、まったくの任意となる。

 すでに、証券アナリストは原則として企業の業績を事前に調査できなくなった。短期的・投機的な株価に一喜一憂せずに、中・長期的な視点に立った経営に取り組ませるためだ。安倍官邸は、業績見通しの開示を御法度にしたいのである。

 『会社四季報』は、オリジナルの業績見通しが最大のウリだった。業績予想がなくなれば、売れ行きに影響が出てくることは避けられない。

【森村 和男】





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