家具とホームファッションで全国に店舗展開。ニトリホールディングス大解剖 – 投信1

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「お値段以上ニトリ」というCMが記憶に残るニトリ。創業者である似鳥昭雄氏の日本経済新聞社「私の履歴書」も大変話題になりました。北海道で創業したニトリは現在、ベッド、マットレス、ソファ、カーテン、布団、食器、家電などにいたるまで大変幅広い品ぞろえを誇り、家回りのものは一通りそろう店舗を全国に展開しています。しかもその商品が洗練されてきました。「お、値段以上」という付加価値をしっかり備えた商品を消費者に届ける仕組みを作り上げていることが同社の強みといえるでしょう。では、いまからニトリの特徴、強み、事業展開の歴史、業績と株価、似鳥昭雄氏の横顔、採用、ぜひ読んでおきたい本を順番に見ていきたいと思います。

目次

1. ニトリホールディングスは家具・ホームファッションの全国チェーン「ニトリ」を核にするグループ
1.1 「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマンを追求する企業集団
1.2 中核は家具、ホームファッションを販売するニトリ

2. ニトリの「お、ねだん以上」の秘密
2.1 ニトリは全てを自前で取り組む製造物流小売業
2.2ニトリは品質にこだわりベッド、ソファ、カーテンなどを作る
2.3 ニトリの店舗はモノづくりのこだわりを表現しきる場

3. 気になるニトリの業績と株価:驚異的成長と意欲的な中期計画を分析する
3.1 30期連続増収増益を目指すニトリの業績の推移
3.2 ニトリの店舗はより都心部へ、海外へ
3.3 ニトリの中長期計画は意欲的
3.4 ニトリの株価パフォーマンスも絶好調
3.5 ニトリの当面の注目点は都心部出店の成否と為替影響
3.6 ニトリの中期的な注目点は海外(中国・米国)での小売展開
3.7 ニトリはアパレルを手掛けるのか
3.8 株主からみたニトリの課題は資本効率の向上
3.9 ニトリの株主優待は?

4. ニトリの経営トップ、創業者の似鳥昭雄氏と現社長の白井俊之氏
4.1 「私の履歴書」で一躍脚光を浴びた創業者の似鳥昭雄氏
4.2 現在の代表取締役社長白井俊之氏は化学専攻

5. 就活生に気になるニトリの採用と人物像を考える
5.1 ニトリの現在の連結従業員数は約1万人
5.2 ニトリの採用実績
5.3 ニトリに求められる人物像

6. ニトリをもっと知るためにおすすめの書籍

1.ニトリホールディングスは家具・ホームファッションの全国チェーン「ニトリ」を核にするグループ

1.1 「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマンを追求する企業集団

ニトリホールディングス(以下、ニトリHD)は全国で家具・ホームファッションをニトリブランドで展開する業界トップ企業です。同社は1972年、創業者であり、現在代表取締役会長である似鳥昭雄氏が札幌で創業し、「日本人の住まいを、アメリカのように豊かなものにしたい」というミッションを実現するために高い成長を維持してきました。現在も「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマンを追求している会社です。

主要な関係会社には、ニトリ、ホームロジスティクス(物流)、ニトリファーニチャー(家具製造)、ニトリパブリック(広告宣伝)、ニトリファシリティ(店舗等の保守など)などの国内子会社に加えて、インドネシア・ベトナムには製造子会社、中国・米国・台湾には販売子会社などがあります。

2016年2月期の従業員数(正社員)は連結ベースで9,699人です。

1.2 中核は家具、ホームファッションを販売するニトリ

グループには国内外に多くの企業が存在しますが、その中核は日本で小売店舗を展開する株式会社ニトリで次の事業を行っています。

  •  ホームファニシング事業:大型家具から寝装品、食器・家庭用品までを、カラーコーディネートを楽しめる豊富な品ぞろえで販売する事業
  •  デコホーム事業:都市圏の小型店舗でホームファッション商品を中心に販売する事業
  • ショッピングモール事業:ニトリを中心としたショッピングモール事業
  • リフォーム事業:システムキッチン、バスルーム、洗面化粧台、トイレなどの水廻りから、壁紙張替、家具などのコーディネートまでを総合的に提案・施行管理・アフターサービスする事業
  • 法人向け事業:オフィス、ホテル、病院などへの販売事業
  • 通販事業:ニトリネットなどのEC事業

2017年2月末現在、国内428店を展開しています。

2. ニトリの「お、ねだん以上」の秘密

ニトリHDは1989年9月に札幌証券取引所に上場し、現在は東京証券取引所第1部に上場しています。上場後の業績の推移をみると1990年2月期から2016年2月期までの26年間に売上高は34倍、営業利益は83倍というきわめて高い成長を実現しています。さらに興味深いのは、これだけの利益成長を実現しているにもかかわらず業績の伸びがコンスタントであることです。2016年2月期は29期連続増収増益を達成し、これを2017年2月期も継続することが期待されています。

このすばらしい実績を支えたのは、「単に安い」というだけでは終わらせずに、価格を超える価値をしっかり商品づくりに盛り込んで消費者の支持を集めてきた、同社のさまざまな取り組みです。

2.1 ニトリは全てを自前で取り組む製造物流小売業

同社が大きな成功を収めてきた要因を一言でいえば、これまで業界がメーカー、商社、小売店という階層的な構造になっていたなかで、同社は率先して品質管理、商品開発、生産管理、物流、販売を一気通貫で手掛け、無駄を排除しながら消費者に価格を上回る価値を届けることに成功し、それが規模の拡大につながってきたことがあげられます。このように小売に徹するのではなく、上流部門も自社で手掛けるビジネスモデルを一般に製造小売業とよびますが、同社はこれを製造物流小売業といいます。ニトリは全てを自前で行い全体最適を追求するという戦略をとっています。

2.2ニトリは品質にこだわりベッド、ソファ、カーテンなどを作る

全体のビジネスモデルの根幹にあるのが品質に対するこだわりです。価格に対してデザインや色、コーディネート性などさまざまなアピールポイントが商品にあったとしても、そもそも品質がともなわなければ顧客の支持を得られないという考え方が根幹にあるのでしょう。

同社の商品には1年ないし5年の保証がありますが、これをささえているのが品質業務改革室です。ここで同社の品質基準を策定し、商品開発から製造、流通、アフターサービスまでフォローしています。こうした取り組みの成果は、経済産業省の製品安全対策優良企業表彰につながっています。

2.3 ニトリの店舗はモノづくりのこだわりを表現しきる場

品質にこだわって開発・製造された商品が、自前物流を経て消費者に届けられる場が店舗です。同社の店舗では作業効率を最適化しつつ、見やすく、買いやすく、商品の価値がしっかりと伝わるような商品の陳列と店舗の運営が進められており、従業員・パート社員全てがしっかり関与できる体制が構築されています。

3. 気になるニトリの業績と株価:驚異的成長と意欲的な中期計画を徹底分析

次に同社の業績と株価について分析していきましょう。

3.1 30期連続増収増益を目指すニトリの業績の推移

同社の業績はこれまで大変堅調です。2016年2月期に29期連続増収増益を実現し、この記録を継続しようとしています。ファーストリテイリングや良品計画でもこれだけの連続記録は成し遂げていません。同社は現状海外で製造した商品を日本で輸入販売していますが、為替の変動も克服してこの記録を続けていることに大いに注目するべきでしょう。

ちなみに経常利益の推移を見ると、上場直後の1990年2月期の9億円から2016年2月期の750億円まで実に82倍になっています。直近5年間で見ると経常利益は536億円から750億円まで1.4倍です。事業規模が大きくなってきましたが着実な利益成長が続いていることがおわかりになるでしょう。

上のグラフは過去10年間の売上高と営業利益率の推移を示していますが、10%台中盤から後半の高い営業利益率を維持しながら、売上高を大きく伸ばしてきたことが注目されます。先に述べた製造流通小売業のビジネスモデルを磨き上げながら、成功裏に出店を継続してきたことがこの実績につながっています。

3.2 ニトリの店舗はより都心部へ、海外へ

ここで店舗数の推移を見ておきましょう。

  • 2010年2月:217店舗、うち東日本125店、西日本87店、海外5店
  • 2016年2月:420店舗、うち東日本186店、西日本197店、海外37店

このように6年間で店舗数がほぼ2倍になっています。国内では東日本と西日本の店舗数が並んでおり、ひとまず東西バランスよく全国展開が進んだと言えるでしょう。

今後を考えるうえでカギになるのが国内都市部と海外(まずは中国)です。特に国内都市部に関しては、2016年2月期に旧プランタン銀座に出店をしたことを重要なステップとして、新宿髙島屋など都心ターミナルに出店を進めています。同社は店舗数の拡大にまだまだ意欲的です。

3.3 ニトリの中長期計画は意欲的

ここで同社の中長期計画を確認しておきましょう。

  • 「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマンを実現する
  • 2022年1,000店舗・売上高1兆円、2032年3,000店舗・売上高3兆円を目指す
  • 2013年~2022年の10ヵ年テーマは「グローバル化と事業領域の拡大」
  • 2015年~2017年は「海外店舗黒字化と事業領域拡大の基盤づくり」
  • 2018年~2020年は「海外高速出店と成長軌道の確立」
  • 2021年~2022年は「グローバルチェーン確立に向けた経営基盤再構築」

足元ではまだ店舗数は500店に届いていませんので、同社が大きなスケールで将来構想を練っていることがおわかりになるのではないでしょうか。

3.4 ニトリの株価パフォーマンスも絶好調

次に株価の推移を見ていきましょう。次のグラフは2002年10月末からの2017年3月19日までの同社の株価の推移(グレー)をTOPIX(赤)と比較したものです。ご覧のように同社の株価はこの期間に13倍を超える上昇を示し、TOPIXを圧倒的に上回るパフォーマンスを示しました。

ちなみに、2003年2月期の経常利益は90億円、2016年2月期は750億円ですので、この間経常利益は8倍を超える増加を示しました。株価の上昇は、ニトリの利益成長の実績だけではなく、その将来性に対して楽観的になってきていると解釈できるでしょう。

出所:SPEEDAをもとに筆者作成

ご参考として、次に直近1年の株価推移を示します。

3.5 ニトリの当面の注目点は都心部出店の成否と為替影響

業績も株価も順調な同社ですが、株価を見るうえで押さえておきたいポイントを整理しましょう。

まず第1に、最近加速が進む都心部への出店の成否です。都心部店舗は集客力がある一方で、地代が高いため効率的な運営が求められます。郊外店舗では車による来店が原則ですが、都心部での顧客の来店手段は電車など多岐にわたりますので配送が従来以上に重要になります。このように同社がこれまで得意としてきた郊外の店舗とは異なる運営をしなければ採算確保がままならないというリスクがあります。

同社はさまざまな対策を練ってきていますが、筆者は価格帯別ブランドの構築という試みに注目します。従来の「お、ねだん以上」の商品ライに加えて、品質・デザインを重視したブランドを導入するとみられます。これが都心部の顧客に受け入れられ採算にもプラスに寄与するのであれば都心部出店にさらにはずみがつくでしょう。出店政策の成否は既存店売上高の推移に反映されますので、この数値には常に注意を払いたいところです。

第2に、為替の影響です。現在同社のビジネスは海外からの輸入販売がメインであり、為替リスクは適宜ヘッジしていますが、中期的に見て為替の影響は免れません。特に円安が進む場合、仕入れ原価の上昇につながる傾向は避けられません。アベノミクス以降の急速な円安に対して同社は為替リスクのヘッジと商品戦略の改善などで実に巧みに対応してきましたが、この手腕が今後も発揮されるのか注目したいと思います。

3.6 ニトリの中期的な注目点は海外(中国・米国)での小売展開

それでは同社の中期的な注目点を考えてみましょう。さきほど示したように同社は2018年以降海外で高速出店を考えていますので、これが同社の今後の新しい成長ドライバーになるのかがポイントになります。

現状(2016年11月現在)、海外は台湾26店舗、中国10店舗、米国5店舗となっていますので、同社連結でみれば海外における店舗運営はまだまだはじまったばかりです。ファーストリテイリングや良品計画がアジアで成功を遂げたように、同社も同じような成長軌道をたどるのか、期待して見守ることにしましょう。

3.7 ニトリはアパレルを手掛けるのか

似鳥会長は2017年2月3日のブルームバーグのインタビューにおいて「アパレルチェーンの展開を検討している」と伝えられています。さきほど触れた2015年~2017年の経営課題に事業領域拡大の基盤づくりがありましたので、アパレル進出も選択肢としてありうるのではないでしょうか。その妥当性については具体的案件ごとに考えたいと思いますが、ニトリの製造物流小売業の特色が生かせるのかが試金石になるでしょう。買入余力があるため負債を活用したM&Aも考えられますので大いに注目しておくべきでしょう。

3.8 株主から見たニトリの課題は資本効率の向上

同社が順調に業績を拡大してきたこと、野心的な事業計画を持っていることなどを見てきましたが、株主という視点から見ると中長期的にぜひ改善を期待したいポイントがあります。それはROEの改善であり、財務レバレッジの活用です。

次のグラフは中期的なROAとROEの推移を示しています。

青のROAは横ばいに推移していますが、赤のROEは最近5年ほど低下基調です。自己資本をうまく使いきれていないということですので、株価に対しては芳しくない要素になります。今後大型投資やM&Aなどで財務基盤の活用がなされるのであればしっかり成果が出せるのか、大型投資やM&Aがない場合には増配などを通じて資本効率していくのか、確認を続けていくべきでしょう。

3.9 ニトリの株主優待は?

本稿執筆時点(2017年3月)では、同社の2017年2月期の年間一株配当金は70円とされ、配当利回りは0.5%程度になりますので、配当期待の投資家の方にはあまり魅力的に映らないかもしれません。

しかし、毎年2月20日時点の株主名簿で100株以上の株主には10%割引優待券が5枚送られてきます。1年以上継続保有の場合(毎年2月20日と8月20日の株主名後に同一の株主番号として連続3回以上記載または記録された場合で、かつ同期間の保有株式数が継続して所定の株式数以上であること)には、100株以上500株未満の株主には10枚、500株以上保有する株主には15枚送られてきます。なお、一枚につき買い物金額の上限は10万円となっています。

4. ニトリの経営トップ、創業者の似鳥昭雄氏と現社長の白井俊之氏

ニトリの経営トップの経歴を見ておきましょう。

4.1 「私の履歴書」で一躍脚光を浴びた創業者の似鳥昭雄氏

似鳥昭雄氏は昭和19年北海道に生まれ、昭和47年札幌で当社を設立、専務取締役となります。その後昭和53年に代表取締役社長に就任し、一貫して同社の急成長を牽引してきました。平成28年に社長を白井俊之氏に譲り、現在は代表取締役会長最高経営責任者(CEO)です。

4.2 現在の代表取締役社長白井俊之氏は化学専攻

現在の代表取締役社長最高執行責任者(COO)は白井俊之氏です。白井氏は昭和30年生まれで昭和54年に同社に入社しました。専務取締役の池田匡紀氏とともに「花の4期生」と呼ばれています。白井氏は工学部で化学を専攻した学歴を持っており、決算説明などの場では冷静、実直で言語明瞭な印象を筆者は持っています。

5. 就活生に気になるニトリの採用と人物像を考える

5.1 ニトリの現在の連結従業員数は約1万人

2016年2月期の連結従業員数は9,699人でほぼ1万人に迫ります。このうち9,308人が家具・インテリア用品の販売にあたり、100人がその他で、291人が管理部門に所属します。家具・インテリア販売に大多数の人材が充てられていることがわかります。これらに加えて平均臨時雇用者数が11,060人となっています。

5.2 ニトリの採用実績

過去5年間の新卒採用は年に300人から400人台後半と見られます。

5.3 ニトリに求められる人物像

同社のHPによれば、同社は「3C主義」を掲げており、これを満たす人材を探しています。

ここでいう3Cとは、現状を変える姿勢があること(Change)、競争を通じて自己成長意欲があること(Competition)、前向きに取り組む姿勢を持っていること(Challenge)とされています。

また、人材育成の方法としては、現場の業務を学ぶ時期、持ち場のコントロールと管理能力を養う時期、数値責任を負って経営管理能力を発揮する時期、将来を見据えた事業展開を行う時期とステップアップしていくことになります。

ニトリは大変意欲的な長期ビジョンを実現しようという集団です。そこでは大きな目標をしっかり持つと同時に、目の前のひとつひとつの課題をきちんと理解し、課題解決にむけて地道にチャレンジを続ける姿勢が求められます。従業員も1万人に近づき、これから海外への展開も加速する局面にありますので、さまざまな人と効果的にコミュニケーションができるスキルも磨いていければ理想的ではないでしょうか。

6. ニトリをもっと知るためにおすすめの書籍

いかがでしたか。ニトリといえば、似鳥昭雄氏のおおらかな人柄のもとで大きなロマンに向かってまい進している印象がありますが、29期連続増収増益を実現したことに現れているように、実は非常に緻密に戦略を立て着実にそれを実行しているというもうひとつの顔を持ち合わせています。

このような社風はおそらく似鳥昭雄氏の経歴に関係していると思います。そこで日本経済新聞の連載で大変話題になった「私の履歴書」を加筆して出版された次の書籍をご紹介します。

詳しくはぜひ同書を手に取っていただきたいのですが、家具店の2号店が苦戦したときに、たまたま米国視察に出たことで、似鳥昭雄氏が突如覚醒し、すぐに長期のビジョンをたててがむしゃらに事業に取り組みはじめる経緯が筆者にはとても印象的でした。ぜひご一読なさってみてください。

運は創るもの ―私の履歴書(日本経済新聞社)

椎名 則夫





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