「シルクは洗えない」の常識変えた京都発の技術 – 日経ビジネスオンライン

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 「面白い技術を持っている会社があるんですよ」。昨年の秋口、人から紹介されて初めて出会ったのが山嘉精練だった。恥ずかしながら、「精練」という言葉を聞いたのもそのときが初めてだった。

 山嘉精練は、絹糸(シルク)の染色や加工を専門とする企業。京都の亀岡市千代川町の地で1970年に創業した。先祖は京都御所の中で天皇陛下などが使用する織物を製作していた御寮織物司(ごりょうおりものつかさ)だ。山嘉精練としての歴史は50年に満たないが、絹を扱い始めたという意味では1555年まで遡る。

 その山嘉精錬が「面白い技術」で開発をしたのが、「洗えるシルク」だ。

 「洗える」以前に、山内伸介社長に会い、話を聞いたときに最初に驚いたのが、絹自身の機能性だ。元々繭の中に存在する蚕を包むように成形された絹糸は、天然素材として優れた機能を持つのだという。絹糸に包まれた内部の温度は24度に保たれ、コットンの1.3~1.5倍の吸水性、1.5倍の放湿性を持つとされる。微生物の繁殖を抑制する抗菌効果があり、消臭や防臭効果もある。タンパク質のフィブロインは、人体に存在する20種のアミノ酸のうち18種を兼ね備え、人体とほぼ同じアミノ酸組成も持つことから、肌にも優しいとされる。

 つまり、シルク素材の衣類を着用することで、内側の肌が適切な温度に保たれ、保湿さえされるというのだから驚いた。化学繊維を使った機能性衣類や、オーガニックコットンを使った商品は登場している。中でも、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、繊維メーカー大手の東レと独自の素材を開発した「ヒートテック」が有名だろう。一方で、そもそも生糸は「生まれながらにして」天然であり、「機能」を持った素材なのだ。「光沢感のある布」程度の知識しかない私は、天然の絹が持つその機能性に純粋に感動した。

繭がはき出した生糸は、天然の高機能素材ともいえる(撮影:宮田 昌彦)

 この機能を世の中にもっと知ってもらえれば、新しい需要を喚起できるのではないか。シルクの高い機能性を消費者に感じてもらえるには、肌に近いところに身につけてもらうのが一番だ。一方で、下着であれば、頻度高く洗えることは必須。クリーニング屋ではなく、自宅で洗える必要がある。そう考えた先に行き着いたのが、洗えるシルク「SHIDORI(シドリ)」だったという。

 絹糸は、フィブロインとセリシンという2種類のタンパク質からなる天然素材。フィブロインをセリシンが覆うような二重構造になっている。繭から紡ぎ出した絹糸から、セリシンというタンパク質を除去することによって柔らかさや堅牢性などを調整する。その作業を「精練」と呼ぶ。その工程は、温度や時間などを細かく調整することから無限に方法があるともいえるが、「糸をさらす湯の温度や時間を調整し、タンパク質の変遷を見る科学的な作業」(山内氏)といえる。

 細い繊維を束にしたシルクは、水や衝撃に弱い。洗濯をすると色落ちしたように見えるのは、シルクに傷がついてしまうから。乾燥した肌を爪でひっかくと白くなるのと同じ現象だ。ぬらしたり乾燥したりを繰り返すと、生地自体が堅くなるのも水洗いに適さないゆえんだ。それを精練の仕方を変えることで、洗濯できるようにした。

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