週休3日や勤務地の限定 なぜ柔軟な働き方が必要? – 日本経済新聞

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働き方改革は引き続き、安倍政権の優先課題だ(働き方改革実現会議に出席した安倍晋三首相)

 週休3日や勤務地の限定など、正社員に多様な働き方を認める企業がニュースになっているわね。なぜ柔軟な働き方が求められているの。こうした流れは今後、定着するのかな。

 多様な働き方について、馬屋原茉那さん(31)と神野王香さん(34)が水野裕司編集委員に話を聞いた。

――企業が働きやすい環境づくりに力を入れていますね。

 「佐川急便は正社員のトラック運転手の一部に週休3日制を導入し始めて話題になりました。ほかにも小売りや情報サービス産業などで週休3日制を取り入れる動きが出ています。また、大手企業を中心にIT(情報技術)機器を活用して、在宅勤務や出先のサテライトオフィスを利用するなど出社しない働き方であるテレワークを導入する企業も徐々に増えています」

 「最近は職務や勤務地を限ったり勤務時間を短くしたりする『限定正社員』制度を採用する企業もあります。『ユニクロ』を運営するファーストリテイリングは勤務地を限った正社員制度を設けています。短時間勤務では家具小売りのイケア・ジャパン(千葉県船橋市)が、1週間の勤務時間を12~24時間あるいは25~38時間とすることができる正社員制度を導入済みです」

 「兼業や副業を認める企業もあります。航空機部品製造のエアロエッジ(栃木県足利市)では、製造工程の設計や生産管理を担うものづくりのリーダーが、横浜市のエレクトロニクス企業などの仕事を掛け持ちしています」

――なぜ、多様な働き方を導入するのですか。

 「6月の正社員の有効求人倍率は2004年の調査開始以来、初めて1倍を超えました。求人が求職を上回り、企業の人手不足は鮮明になっています。人材確保のため、今後は派遣社員やパートだけでなく、正社員の給与もじわじわ上がってくるだろうと指摘する人が増えています」

 「ただ、働く側からは賃上げを期待する声がある一方、賃金よりも、自分に合った働き方を第一に求める人も増えています。子育てや親の介護などと仕事を両立させるため、残業が少なかったり休みが取りやすかったりする働き方へのニーズが高まっているのです。転勤、つまり転居を伴う異動についても議論になり始めています。キリンビールでは、育児や介護などの事情のある社員は最大5年間、転勤をせずに済むよう申請できる制度を設けています」

 「『女性の活躍推進』の面からも多様な働き方が求められています。2017年版の男女共同参画白書をみると、日本は就業者全体の中で女性が占める割合は43.5%と、ほかの先進国に大きく後れを取っているわけではありません。しかし管理職に占める女性の割合は13%にすぎず、先進国の中でかなり低いのです。女性が継続的に働け、キャリアを積める環境を整えるには、働き方の多様な選択肢を用意することが欠かせません。高齢者が働きやすくするためにも必要です」

――多様な働き方は定着しそうですか。

 「働く側のニーズが多様化する中では、柔軟な働き方ができる制度を用意しておかないと、有望な人材を確保できないでしょう。ただ定着させるには、人事評価の見直しも重要になりそうです。『残業しなかったから評価が低いのかもしれない』などと思う人が多いようでは、短時間勤務や休日を多めに取れる制度は浸透しません。透明性の高い客観的な評価システムを導入することが大事です」

――雇用される側にとって利点ばかりなのですか。

 「自分に合った働き方を選べる代わりに、仕事でどんな結果を出したかが、いっそう問われることになるでしょう。海外と同じように、実績次第で降格や処遇の切り下げという事態も増えてくるのではないでしょうか」

 「重要なのは生産性を高めるという視点です。労働時間を抑えるには効率的に働く必要があります。そうしないと早く退社できたとしても、やり残した仕事を自宅でサービス残業してこなさなければなりません。これまでの仕事のやり方を根本的に見直せるかがポイントです」

■ちょっとウンチク

背景に学び直しニーズ増加

 週休3日や短時間正社員の制度が広がる理由は社会人の学び直しへのニーズが高まることもある。人口減少で1人あたりが生む付加価値を増やす必要があり、働き手は自らの能力開発を求められる。再教育の場として期待されるのが大学だが、大学生総数に占める25歳以上の比率(2012年)は1.9%と経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で極端に低い。柔軟な働き方がその引き上げを後押しする。

 賃金の高い仕事に移るためにも学び直しが要る。リクルートワークス研究所の16年の全国就業実態パネル調査では、「その他の産業」から「高付加価値産業」へ移った労働力は8.3%と少ない。仕事に追われるだけでなく自己研さんに励める働き方が大事になる。

(編集委員 水野裕司)

■今回のニッキィ
馬屋原 茉那さん IT関連会社勤務。最近、宝塚歌劇団を初めて見た。「物語の世界に入りやすい上、男役の方の美しさに心奪われました。これからも劇場通いを続けたいと思います」
神野 王香さん 不動産関連会社勤務。妊娠後、マタニティースイミングを始める。「体調管理や出産・育児の情報交換の場になっています。今から赤ちゃんに会えるのが楽しみです」

[日本経済新聞夕刊2017年8月7日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は8月21日の予定です。

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