世界マーケティング短信: ソレルの野望、日本の独自性、真のイノベーション – Campaign Japan

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ソレル氏、引退しない考え

現在73歳のマーティン・ソレル氏(WPPの元CEO)は、多くの人の予想通り、引退はしないようだ。ニューヨーク市で今週開催されたカンファレンスに登壇した同氏は、詳細は明らかにしなかったものの、新しい事業に取り組みたいと表明。WPPを去ってから、広告業の強みと弱点が一層明確になったと語り、広告ビジネスは「再構築を果たせるはず」と強調した。

ソレル氏が今後どのような事業を行うつもりなのかは、誰にも分からない。ソレル氏自身も、まだ明確ではないのかもしれない。同氏はたしかに、今日の広告業を形づくってきた(WPPの影響力が強くない日本を除いて)。だが、広告業が今後もずっと繁栄していくために何が必要なのか、その全てを知り尽くしているわけではないことを、彼自身も認めるべき時に来ているのだろう。ソレル氏が作ったビジネスモデルは終焉を迎えると信じる人も少なくないようだが、こういった悲観論は往々にして大げさに語られがちだ。

広告業の未来は、誰にも分からない。この事実を直視しよう。エージェンシーのブランドは減少するかもしれないが、必ずしもそれが悪いこととは限らない。我々が望むのは、もっと業界の外に目を向けたアプローチや、より高い信用、そしてより簡潔な業務推進なのだ。

根強いガラケー人気は、日本特有の現象

モバイルマーケティングに熱心な方々には、ぜひ「スマートフォンが全てではない」ということを心に留めてほしい。eマーケター(eMarketer、本拠地はニューヨーク)の調査によると、日本のスマートフォン普及率は56.1%(2018年)から61.2%(2022年)に上昇すると予想されている。既に普及率が75%以上に達しているシンガポールや韓国と比べると、この数字はかなり低い。日本の人口の25%超が65歳以上であり、彼らの多くがスマートフォンへの移行に必要性を感じていないことがその理由だと、eマーケターのアナリスト、クリス・ベントセン氏は述べる。「スマートフォンユーザーは決して少なくありませんが、フィーチャーフォン(従来型の携帯電話、いわゆるガラケー)がまだ“過去の遺物”でないというのは、先進国の中で日本特有の現象です」。

ミレニアル世代に向けた、当たり障りのないアメックスCM

今年3月、「ミレニアル世代」という言葉はひと括りでは捉えられないという調査結果について書いた。この調査結果への賛否はあるだろう。だが、「視聴者自身の姿をそのまま映したような広告は、一般的に効果的ではない」という点については反論の余地がないだろう。

アメリカン・エキスプレスが今週から豪州で展開する新しいグローバルキャンペーンは、まさにその典型だった。当たり障りのないCMではあるが、若者が好みそうで、お金や時間をかけそうな数々のアクティビティーをただ延々と映し出すのみで、同社が実際に提供している価値、すなわち支払いや支出管理が容易になるという価値をなぜ打ち出さなかったのかという疑問が残る。このキャンペーンで最も有意義だったのは、同社が豪州の音楽産業に100万ドルを出資したことだろう。出資額よりもはるかに高額を投じて制作されたCMと比べ、ブランド価値向上に大いに寄与するのではなかろうか。

WPP、BP専門チームを立ち上げ

石油メジャーの1つであるBPはグローバル市場の再調査を行い、今後もWPPと広告やメディア、PRに取り組んでいく決定を下した。これまでBPのグローバル広告とメディアは、20年近くオグルヴィとマインドシェアの2社が担ってきた。今回の決定を大きく左右したのは、WPPが立ち上げたBP専門チーム「チーム・エナジー(Team Energy)」。オグルヴィやグレイ、マインドシェア、エッセンス、VML、ソーシャルラボ、そしてランドーといった傘下のエージェンシーからスタッフを選抜して作り上げた。同チームは今後、広告やメディア投資の管理、ブランディング、リサーチといったサービスを提供していく。こうした構造改革は、異分野のリソースを束ねるハブとの一括したやりとりでマネージメントを円滑にしたいという、主要クライアントからの要望が強まっていることを表す。複数の異なるエージェンシーと協働することについて、ある業界観測筋はクライアントの立場から最近このような表現をした。「理屈の上では、幼稚園で働くことと酷似しています」。

「真のイノベーション」と「見せかけのイノベーション」

グーグルが毎年恒例の開発者会議で音声認識システム「グーグルアシスタント」の新技術を披露、会場を沸かせた。この機能はあるレストランと音声通話を行い、時間や席数の調整をして予約を取り付けることに成功。確かにこれまで以上に賢いデバイスだが、本質的には「パーティー芸」の域であり、現段階で諸問題の解決に役立つとは言えないだろう。

「デジタル・ダーウィニズム」という著書を発表したゼニス・ニューヨークのイノベーション責任者、トム・グッドウィン氏は今週Campaignのインタビューに応え、「数多くのブランドがイノベーションを興奮気味に語りますが、それらは表面的なものでしかない」と話した。その一例が、航空会社だという。

「彼らに求められているのは、利用客がより迅速にチェックインできたり、フライトの変更ができたりするようなアプリです。航空会社もそのことは分かっています。しかしいまだに1960〜70年代のソフトウェアに依存していて、そのイノベーションは見た目を変えているだけにすぎません」。例えば娯楽面で、英国航空は乗客の気分を感知する「ハイテク毛布」を導入した。「利用客が本当に求めているのは、より優れたカスタマーサービスです。少なくとも私は、よく利用する航空会社に電子メールを送りたい。ところが、それが絶対にできないのです」。

グーグルアシスタントは明らかに大きな可能性を秘めており、今後どのように進化していくか興味深い。散々宣伝されて登場したソフトバンクの人型ロボット、「ペッパー」のようになってはならないのだ。グッドウィン氏が書いたように、「イノベーションが限定的かつ形式的で、その企業の本質から外れたものであるなら、それは単なるジェスチャーであり、からくりにすぎない」のだから。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉、田崎亮子)





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