M&A交渉で買収金額が吊り上がる理由 – ニコニコニュース

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あなたは予算書・決算書を正しく理解できているだろうか。「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」では、そのポイントを8つのパートにわけて解説した。第7回は「のれん代の算定法」について――。

■キリンは約1140億円の「のれんの減損処理」

事業の拡大を図りたい企業にとって有力な手段になるのがM&Aだ。その成否で、成長を手にする企業もあれば、経営危機を招いてしまうところも出てくる。これだけ企業活動がグローバル化してくると、買収先は海外の会社も対象になる。ところが、経済ニュースを見ていると失敗する企業が後を絶たない。

国内市場が低迷するなか、海外に新市場を求めざるをえないビール業界も御多分に漏れない。キリンHDは、2011年にブラジルのビール大手、スキンカリオール(純資産1019億円)を約2000億円で50%強の株式を取得し子会社化した。しかしほどなく、残りの株を所有する大株主に訴訟を起こされ、最終的に全株を買わされ、買収金額は約3000億円に膨れ上がった。その後も誤算は続き、ブラジル国内シェアを2位から3位に落とすなど不振が続き、15年12月に、子会社の企業価値を見直し、約1140億円の「のれんの減損処理」を発表。17年、わずか770億円でハイネケンに売却した。

M&Aは、将来期待される利益を見込んだ額で買収するインカム・アプローチが一般的である。そのため、買収した企業の帳簿上の価値、つまり純資産より多く払うことになる。この金額を広義に「のれん代」という。ただ、その価値を見誤ると減損という形で買い手企業を苦しめることになる。そうした状況を招くのは、日本企業の場合、買収相手との駆け引きや、競合相手との価格の吊り上げ合戦によって、当初の買収予定金額を上回っても、勇気ある撤退ができないからだ。取締役会などの意思決定事項を途中でやめるという判断をほとんどしない。

■特許権、商標権、顧客リストなど無形固定資産も「のれん代」

買収価格から純資産額を引いた広義ののれん代の中には、無形固定資産が含まれている。これには、特許権やブランドを守る商標権のほか、ソフトウエア、独自技術、優良顧客リストも含まれる。広義ののれん代から無形固定資産を引いた額が、狭義の意味でののれん代である。

買収した企業の業績が振るわなかったり、自社の傘下でのマネジメントが思うようにいかないと、のれん代は毀損し、会計上は減損として決算書上で処理しなければならない。

その際、日本基準とIFRS(国際会計基準)のいずれかを選択する。一番大きな違いは減損対象の償却方法。無形固定資産はどちらの基準でも償却しなければならないが、狭義ののれん代は、日本基準では一括ないし最長20年かけて償却するが、IFRSはその必要がない。

いずれを選択するかは経営陣の判断に委ねられるわけだが、償却をしないでいいことから営業利益を減らさないで済むという理由で、国際会計基準を使う会社もある。ということは、M&Aを積極的に進めても損益計算書に影響が少ない。だが、買収がうまくいかなければ企業にとっては大きな負担になる。

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小谷和成
株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門主席研究員
公認会計士。1987年、京都大学卒業後、旧三井銀行入行。旧中央監査法人などを経て2000年日本総合研究所入社。08年から現職。

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PIXTA=写真



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