ダイバーズウォッチができる前、ダイバーたちは何を使っていたか?(1/1) – クロノス日本版

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Text by Roger Ruegger

1950年代初めに、ロレックスとブランパンが、今では典型となっている回転式ベゼルを採用した事によって、現代の本格的なダイバーズウォッチの原型となるものを作り上げた。しかし彼らがダイバーたちによって使われる最初の時計を発明したと言うわけではない。では、ダイバーズウォッチができる前、ダイバーたちは何を使っていたのだろうか?

 時をさかのぼってみると、第二次世界大戦中には(特にイタリア海軍の潜水夫たちによって)、海中での作戦そして海難救助や引き上げの必要性が顕著であった。このためタイミングや方向性を正確に測りながら、水中での作戦を遂行するための、防水性のある時計のニーズが飛躍的に高まったのである。1940年代にはさまざまな防水時計が導入され、その中には防水性を高めるためにリュウズにキャップがつけられたキャンティーン(水筒)タイプのものもあった。1930年代の初めには、パネライがイタリア海軍のダイバーたちにさまざまなツールとともに(ロレックスの協力を得て)ダイバーの為に特別に開発された最初の時計を供給していた。

 その4年前、そしてもっと民間レベルで、オメガがレクタンギュラーのマリーンを発表。左右へのスライディングで取り外し可能な特許取得のケースを採用し、(理論上は) 100m以上の防水性能を持っていた。これによって、マリーンはアメリカの博物学者で探検家の水深14mでも水が浸入しないことを確認したウイリアム・ビームや、フランス海軍士官のイヴ・ル・プリウールなど、ダイバーズウォッチのパイオニアたちによく使われていたのである。

 ただ、本当に初期のものにたどり着くにはさらに時間をさかのぼる必要がある。
 1920年代初頭、時計の会社はいくつもの防水性があるケースを備えた一般的な腕時計またはブレスレットを市場に導入していた。中でもメルセデス・グライツの非常にメディアへの露出の多い遊泳記録によって、ロレックスのオイスターケースが最も顕著な例となっていた。しかしながらダイバーたちをターゲットとする水中の世界は、水平なムーブメントを水の中で使用するという点において、時計産業にとって基本的にないに等しい存在と見なされていた。

ダイビングの産業化に伴って、20世紀初頭よりダイビング用のヘルメットが確立されていった。これに伴い必要となった時間測定のため、ダイバーたちは二重のケースを持つ懐中時計をヘルメットの内側に装着した。

 当時はヘルメットをかぶったダイバーたちの活躍する時代であった。1820年代から、勇気ある者たちが消火活動に使われることを意図して開発されたツールを使い、海底を歩くことを試みるようになっていた。海上からは常に空気が供給されていたため、水中での時間計測は彼らにとって最優先事項ではなかったのである。海中探索の領域がさらに広げられ、またダイビングの産業化に伴って、20世紀初頭には最初のダイビング用のヘルメットが確立されていった。これにより、ダイバーたちにとってどれだけの時間を水中で過ごすことができるのか、ということを知る必要性が増してきたのである。時計産業界はすでに、さまざまな理由のために防水性のある懐中時計作りの経験を積み重ねていた。幸いにもダイビングスーツの外側につける懐中時計と言う考え方は開発研究の対象とならなかった。なぜならこれはダイバーたちにとって身体的な負荷を与えることになるからである。

 その解決法は至極単純なものであった。ダイバーたちは懐中時計をダイビング用ヘルメットの内側に装着したのである。これによってダイバーたちは常に視界の中に、深度計とともに時間を捉えることができるようになった。この方法では、必要なときにいつでも時計を取り出せるよう、ヘルメット中にふたつ目のケースを取り付ける方法がとられた(写真参照)。

 つまりダイバーたちが、「ヘルメット装着!」という命令の掛け声を聞いた直後に、視界に入りなおかつ聞こえてきたのは、懐中時計の文字盤と、チクタクという刻音であった。それが水に浸からないことを祈りつつ。





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